悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
アメリアは、参加者達が一同に目を向けていることに気づいた。そこにはダンスをやめたミッシェルとマティウスの姿があった。

マティウスは手を取ったまま、彼女を見つめている。

その場が、束の間のささやかなざわめきを残して静まり返った。演奏音も波が引くように消えて、二人ためだけの舞台のようだった。

「ミッシェル嬢。昔、僕らが出会った別邸を覚えている?」

問われたミッシェルが、一呼吸置いて小さく頷く。

「もちろんですわ、殿下。……忘れたことなど、ございません」

告白するという計画を思い出したのだろう。ミッシェルは緊張を漂わせ、けれど見ている誰もが大切な思い出だと分かった。

ミッシェルが、覚悟を決めたように唇をきゅっとした。

「あの、殿下――」

だが、続く言葉は、マティウスの声に遮られた。

「僕は、あの日から、ずっと君が好きだったんだ」

「え……?」

「まだ勉強も中止半端だった僕に『教えてあげよう』と笑ってくれた君、楽しく本の話をしてくれた君。その全部が、今も、目に焼き付いて離れない」

マティウスが、取って手を握り寄せて、もう一歩ミッシェルへと近づいた。

「ミッシェル嬢、僕と結婚して欲しい」

「まっ、マティウス!?」

思いもしていなかったのだろう。唐突のプロポーズを受けたミッシェルが、思わずといった様子で、彼がよく知る素の口調で言った。

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