悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
いざ答えようとしたら、素直に言えなくなった。意識してかぁっと赤面してしまったアメリアは、ごにょごにょと言ってしまう。

そうしたらエリオットが、距離を詰めてきてアメリアの両手を優しく取った。彼の方へ視線を戻されると、やけに優しい声で尋ねてきた。

「それは、今は俺と結婚してもいいと思っている、という認識でいいのかな?」

……なんでドンピシャで人の心の声を当ててくるの。

確認されたアメリアは、その声だけでも胸がばくばくして余裕がなくなった。でも言うよりはましだと思って、こくん、と頷いてみせた。

するとエリオットが、穏やかな雰囲気で微笑んだ。

「ありがとう、アメリア」

その笑顔を見て、とても信頼できそうに感じてしまった。

――ああ、私、この世界では結婚できるのね。

不意に、前世の憂いのような想いが脳裏を過ぎっていった。家族の顔や、三十代で終わってしまった自分の最期も思い出せないでいるのに。

ふと頭に浮かんだのは、ようやく兄に、花嫁衣裳を見せられるのか、とったことだった。

その時、エリオットの笑顔がにーっこりとして、アメリアはハタと我に返った。

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