悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
アメリアは、うーんと自分のスドレスに目を落とした。

「でも、本心ですよ。実は昔から、一度でもいいから結婚してみたいなぁ、とは思ってもいたんです」

「『思っていた』?」

疑問視するように言葉を繰り返されて、ハッと我に返った。

それは前世での話だ。同棲ってどんな感じなのかしらと、同僚と話していてちょっとだけ気になったり、結婚を羨ましく思った時期もあって――。

でも結局、全部叶わなかったのだ。

よくは覚えていない。最後まで、自分は幸せだった気がする。友達と推しの話で盛り上がったり、イベント本を作ったり、会社でも元気に走りまわっていた。

それでも、心残りのような寂しさを一点、覚えていた。

『結婚かぁ……いいなぁ』

初めて出席した友人の結婚式で、周りの人達と一緒になって祝福の拍手を送りながら、自分がそう呟いた声が耳元で蘇った。

「アメリア嬢?」

過去に引きずられそうになった拍子に、名前を呼ばれてドキリとした。

そういえば、さっきのことを言い訳するのを忘れていた。アメリアは見つめているエリオットに気づくと、あわあわと慌てて弁明する。

「言葉のあやなんですっ、気にしないでください!」

「……お前、言葉使いが令嬢っぽくなくなっているぞ」

「えっ、嘘!?」

指を向けられて指摘されたアメリアは、「ひぇっ」と口元に両手をあてた。

< 23 / 230 >

この作品をシェア

pagetop