悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
昔、騎士学校で一時、寮生活を送っていたせいもあるのだろうか。跡取りの令息だというのに、ロバートは平気で腰を下ろしてアメリアの頭を撫でる。

「……お兄様、執事長に見られたら怒られますわよ?」

「平気だって。今日もアメリアは可愛いなぁ」

とても嬉し気に頭をぐりぐりされた。

普通伯爵家の令息なら、もうちょっと品のある撫で方もあるのでは……。そう思ったところで、アメリアは不意に気づいた。

自分には、前世でも兄がいたのだ。

顔は思い出せない。でも好きな小説や漫画やゲームにハマって、イベント活動にも精を出す自分を、いつも笑って応援してくれていたのは覚えている。

――そんな兄が、とても大好きだったのを思い出した。

こうして前世の記憶を思い出す前から、そうして記憶を思い出した後も、妹馬鹿な彼を肉親として愛しているのは、そのせいもあるのだろう。

「ん? 僕をじっと見て、どうした?」

見下ろすロバートが、気さくなにニッと笑う。

前世でいた兄の笑った顔は、覚えていない。ロバートみたいになんでもできる人ではなかったし、勉強よりもスポーツが好きだった。でも、不思議と、その手は同じである気がした。

「そういえば、お兄様は今日も王宮へ行ってらしたのよね?」

「うん。午前中だけだけどな」

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