悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
一瞬、話を聞くミッシェルが、ぴくっと指先を反応させた。その表情がどこか憂いを帯びて、視線がゆっくりと落ちる。

会話が途切れた。クラークが疑問の目を向けて、アメリアも不思議になって彼女に尋ねた。

「どうかされましたか? もしや、ご気分でも? 結構話していましたし、ミッシェル様、あまり体力がないから侍女達がお時間をはかって――」

「あ、いや。大丈夫、なんでもないんだ」

ミッシェルは、とりつくろうように答える。

「私のことより、君のことだ。王族と婚姻を結びたいとする令嬢は沢山いる。好かれての婚約ならば尚更、婚約後も気をつけた方がいい」

心から心配したように言い聞かされて、アメリアはうーんと考えてしまう。

見合い一回目で、第二王子が一目惚れして婚約が決まった。何故かそんな説が上がっていて、どうやら一部では信じられているらしい。

破棄する予定での偽装婚約だった、と言ったらドン引くだろうなぁ……。

とくに優しい彼女は「そんな不誠実な」と心を痛めそうだ。そう考えると、婚約破棄後も教えない方向でいた方がいいだろう。

「ミッシェル様、私は平気ですよ。ありがとうございます」

アメリアは、平気だと伝えるようにへらりと笑ってみせた。

「政略結婚みたいなものですから、心得ております。もし途中で殿下との婚約が危うくなったとしても、そもそも私に決定権はありませんし」

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