悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
どこか刺を感じる口調で彼が言った。

女の子として動じないのは、彼にそういう気がないのは分かっているからだ。前世では、恋愛なんて自分には遠い世界の話だと謙遜して三十代を過ごした。

――というか、彼はなんで自分相手に、こんなことをしているのか?

エリオットの目が、近くからアメリアを見下ろしている。自分はヒロインじゃないんだけどなと、頭の中がこんがらがって疑問府でいっぱいだった。

「既に〝アレ〟には、この近さまで許しているのか」

不意に、彼の目が苛立ち交じりに細められる。

空気が一気に重くなったように感じた。視線もビシビシと突き刺さってきて、アリメアは壁に背中をぎゅうぎゅうに押し付けて後退する。

「あの、おっしゃっている意味が分かり兼ねるのですが……」

逃げ出したい。よく分からないけど、なんか八つ当たりでもされている気分だ。思わず、彼の向こうに見えた近くの騎士へ目をやった。

直後、気づいたエリオットに腕で遮られた。

「お前は今、俺の婚約者だ。こうしていても許される」

「えっ、でもあの、この近さはいささか問題では」

「俺は肩なども抱いていないのに?」

さっきからエリオットが、何を言っているのか分からない。気のせいか、答えるごとに彼の苛々が増していて、あと拳一つ分で体がくっついてしまいそうだ。

そもそも私達、破棄前提の偽りの婚約ですよね?

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