悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「で、殿下、どうか離れてください」

アメリアは、なんだか彼の美しい顔を見ていられなくなって、慌ててそう言った。

「何故?」

「まだ婚約者同士ですしっ」

「もう婚約者同士だよ、アメリア。だからこちらを見ろ」

アメリア、と名を呼んだ声色が、一瞬だけ変化したような気がした。

ハッとした。もしや、これって偽装婚約であると勘ぐられないための策だったりするのでは?

部下に言われて寄越されたと、本人も言っていた。不服ながら花を渡すために自分を待っていたとしたら、面白くないはずで……。

つまり『時間を取らせてんじゃねぇよ』的な八つ当たりも含まれる?

相手は自分を嫌っている〝メインヒーロー〟である。もしかしたら多分、きっとそう! アメリアは考えるや否や「失礼します!」と逃げ出していた。



◆§◆§◆



その翌日、アメリアの姿はまたしても王宮にあった。

今、彼女は例のストーキングスポットの柱の影にいた。その視線の先には、〝高貴なる令嬢〟こと、ミッシェルが趣味の読書に耽っている姿がある。

「ああっ、今日もなんて麗しいのかしら……!」

猛烈に話しかけたくて仕方がない。

けれど、ここは我慢だ。最近になって気づいた推しの悩みについて、少しでも何か分かることがないか様子を観察しているところなのである。

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