悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
初めて会った際には、偽物の婚約者という要求にも動じない女だと思っていた。しかし、さっき見た感じだとイメージが少し違っていた気がする。

初めて髪に触れた時、真っすぐこちらを見ていたアメリア。

その大きなチェリーピンクの瞳には、打算だとか思惑も何もなさそうだった。今思い返してみると、迫られているのに、まるで自分が何をされているのか分かっていないみたいにも思えた。

「まるで、初心、みたいな……」

エリオットは、思わず思案しながら口の中にもらした。

それでいて少し近づいてやったら、離れて、と言われた。彼女にとってそんな気が全くない相手なのかと苛立ったのも一瞬、動揺しているだけだと気づいた。

『で、殿下、どうか離れてください』

細くなったその声は、なぜかエリオットの胸をくすぐった。

あの時エリオットは、他の者から聞く王宮での彼女の様子を思い出していた。どうしてかその目に、自分だけを映したくなって。

なんというか、警戒心も半ば忘れていたような彼女が新鮮に映った。気を張っていないでいると、まるで一人の、普通の少女みたいな――。

その時、声をかけられてエリオットは我に返った。

「そういえば殿下、民へのアピールを兼ねた教会視察の件ですが」

確認した部下へ答えようとして、不意に気づいた。

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