悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
ゲームをやっていた当時、推し以外のシーンを流し見しながら、仕事で疲れ切った頭でビールを片手に思っていた。

そんな自分が、この世界で〝婚約者〟をやっているなんて、おかしな話だ。偽りだから実感はないし、前世でも彼氏無しだったので結婚も想像つかないでいる。

私、ここでは結婚できるのかしら?

最近チラリと考えるたび、しなければならないのだろうと思う。ここは今のアメリアにとって、ゲームではなく現実(リアル)なのだ。

貴族の娘として生まれたからには、嫁がないと両親や兄が困るのだろうなぁ、とか現実味がまだない中で考えてはいる。……あ、いや、もしかしたら兄は全くどうでもいいと思うかもしれないけれど。

あれ? そうだとすると、本気になれば私〝高貴なる令嬢〟の侍女になれたりするんじゃない?

アメリアは、当初思った未来予想図について考えた。しかし、それはミッシェルの方から聞こえた、独り言のような感想で終わりとなった。

「政略結婚って、きっと愛もあると思うんだ」

ふっと顔を上げてみると、そこにはティーカップを見下ろしている美しいミッシェルの姿があった。

気のせいか、そうだったらいいな、という風にも聞こえた。

ミッシェルの眼差しはとても柔らかだけれど、どこか寂しげだった。――まるで恋がしたいみたいだ、とアメリアは不思議とそう感じてしまった。



◆§◆§◆



< 92 / 230 >

この作品をシェア

pagetop