悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
その時、ふっと問われる声が聞こえた。

「舞踏会があるのは、もう知っているか?」

教会視察の件から話題がそれてくれた。助かったと思って、アメリアはパッと目を戻すと営業スマイルで答える。

「存じ上げておりますわ。近々あると、近衛騎士隊長様がおっしゃっておりましたので――ひぃ!?」

なぜか、エリオットの冷気が一気にマックスになった。

「そうか。先に口にしたのは、男の方だったか」

まるで独り言のように呟く彼が、口元に浮かべている不敵な笑みが怖い。よくは分からないが、真っ黒いオーラを背負っているのは見える。

「確かに、めかし込んだ今日の俺の婚約者は、ますます美しい」

「あの……?」

思ってもいないことを言われて、アメリアはたじろいだ。

不穏な空気を察したのか、それとも二人でいる姿が珍しいからか、通っていく人達が何だろうというように目を向けていく。

アメリアが後ずさりすると、アリオットが距離を詰めて迫ってくる。

「俺の婚約者殿は、これから、どこへ行こうというのかな?」

「へ? ああ、その、ちょっと用事が……」

しどろもどろに答えたら、彼が「ふうん」と意味深に目を細めて「『ちょっと』ね」と言葉を繰り返してきた。

ああ、普段の〝悪役令嬢アメリア〟らしくない言い方になってしまった。伯爵令嬢としてもしっかりしなければと、アメリアは体裁を守って素早く礼を取る。

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