何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「ウワー!!」

戦場では、多くの怒号が飛び交う

(これが戦い…。)

京司は生まれて初めて、戦場の中にいた。

「矢よけろ!!」

りんが声を荒げた。
ビュン
容赦なく矢の雨が、彼等めがけて降って来る。
それは、敵も味方も関係なく…。

「うわ!」

京司が思わず声を上げ、目を閉じた。

「目閉じんな!!」

そして、りんがもう一度大声で叫んだ。

「…。」

その言葉に、京司は目をゆっくり開いた。

「しっかり見るんや!」

そこは砂埃が舞う戦場。
周りは敵か味方かもわからない。

「オイ!こっちだ。」
「大丈夫か!」

そんな戦場の中、反乱軍の面々は声をかけあっている。
彼らはちゃんとわかっている。
しっかり目を開け、見極めている。それが敵か味方か。
そして

『国の軍からなんとか逃げながら、ここまで来た。誰も殺さない。』

それが彼らの戦い方。
誰も殺させない。誰一人欠けてはいけない。


(俺は何も知らなかった。)

ただ城の中に閉じこもったままで、どうやってこの国を変える事が出来る?
この国の痛みも何も知らずに。
この国の本当の姿を見る事もしないで…。


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