何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「え…。」

天音は、シドにもお礼が言いたくて、彼の元へと足を運んだ。
ここに来なければ、彼に会わなければ、もう一度前を向く事はなかった。

しかし、そこでシドから告げられた事実に、天音は言葉を失った。

「アイツは、ここを去った。」
「ウソ…。」

(京司がいなくなるなんて…。そんな事あるはずない!)

天音は、シドのその言葉を、簡単には受け入れられなかった。

(だって…。)

『お前は俺にさんざん言ってきただろ。一人じゃないって。』

(あなたは一人じゃないって言ったじゃない。これからは、ずっと二人でいられるって、そう思っていた…。)

「……なんで…何も。」
「アイツにはアイツのやるべき事があるんだと…。」

しかし、シドの苦痛に歪む表情が、それが現実だと物語っていた。

(どうして、何も言わないで、一人で行ってしまったの?
あなたはもう一人じゃないでしょ?)

「嫌だよーーー!」

大声で叫びながら天音は走りだし、明かりも何もない荒野に一人飛び出して行った。

「天音!」

その後を、天音の横でシドの話をただ黙って聞いていたりんが追う。


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