何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「この町にも厄除けグッツ増えたなー。」
りんは、城下町のメイン通りを歩きながら、独り言のように、つぶやいた。
反乱軍が、各地で大きな力を持っている事は、城下町の人間の耳にも入っていた。
そして、それが城下町の人間の不安を煽っている事は言うまでもない。
しかし、未だ天使教を崇拝するこの町では、反乱軍の力は天使教の前では無力だと信じる事でしか、不安を拭う事はできなかった。
そんな町では、天使教関連のグッズが、飛ぶように売れていた。
「どれも、天師教様のご利益付やて!本当に効くんかな?なあ、そう思わん?」
そう言って、りんは、隣にいた彼に話を振った。
「…。」
「おっさんも大変やなー。町の見回りー。」
辰は町の見回り中に、りんに偶然出くわしただけだった。
この頃は、りんはいつも町で辰に出会うと、当たり前のように話しかけてくる。
「ま、この町は信じとるからな。天師教様の偉大なパワー。」
ハハ。と乾いた笑いを浮かべるりんを横目に、辰はうんともすんとも答えなかった。