何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「で?俺に何しろって?」
京司は宰相に、いつもの会議室のようなだだっ広い部屋に呼ばれていた。
その部屋には、今日もこの国の政治を行う重要人物達が集まっていた。
そして、部屋には重苦しい空気がたちこめる。
「演説していただきます。」
その中から代表して、宰相が静かに口を開いた。
「ハハ。神の裁きがくだる!って?」
京司はバカにしたように小さく笑った。
「ハイ。」
しかし、宰相はどこまでも大真面目。取り乱す事なく静かに答えた。
「…もう天師教を信じているのは、この町だけなんじゃないの?」
京司は冷たい視線を宰相に送った。
「恐れ多い…。」
宰相がその細い目で、ギロリと京司を睨む。
前天使教の頃から宰相の職に就いていた彼には、誰にも逆らう事は出来ない。
そう、天使教である京司以外は…。
「反乱を抑えても、また新しい反乱が立つ。」
「また倒せばよいのです。」
「それで、天師教の力が保てる?」
宰相は、淡々と京司の言葉に答える。
そして、京司は、宰相の反論にひるむ事なく言い返す。
「ハイ。」
宰相は表情一つ変えず、静かに答えた。
「あのさ!」
しかしそれと対照に、京司は我慢しきれず声を上げた。
「これは決定事項。演説を行っていただきます。」
今回ばかりは、宰相も京司の話に割り込んで、それ以上は喋らせようとさせない。
これ以上、彼の我儘に付き合ってなどいられない。と言わんばかりに。