何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「 ……。」

京司は不服そうな顔で、宰相を睨んだ。

(コイツら、何にもわかっちゃいない。)

「最近…外出されてませんね…。」
「…見張りだらけで、どうやって外に出ろって?」

宰相が独り言のようにつぶやいた言葉を聞き逃す事なく、京司は鼻で笑った。
京司がこの城を頻繁に抜け出していた事など、宰相には筒抜け。

「天師教は神です。外の者に姿をさらしてはなりません。」
「外に出ても、誰も俺が天師教だなんて気づかねーよ。」

京司は、フツフツと湧き上がる怒りを何とか抑えこもうとするが、それは無理な話。

「あなた様がいる限りこの国は安泰です。」

ダン!
京司は我慢できず、目の前の机を叩いて、立ち上がる。

「じゃあ?天師教がいなくなったら?」

彼のその目には怒りしかない。

「この国は荒れ狂うでしょうな…。」

しかし、宰相は無表情な顔で京司を見た。

「え?」
「それでは明日。」

言葉を失った京司よりも、宰相が先に席を立った。
それは、形ばかりの()()()()の終わりを告げていた。

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