身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「……その反応は子どもっぽいな」

「わかっています!」

仁はもとあった場所にクッションを戻すと、椿へ詰め寄り腕を掴んだ。

「そうか。そもそも君がまだ子どもであることを俺はすっかり失念していた」

「失礼ですね! 私は――」

「子どもだっただろう。まだ男を知らない、二十五歳の女の子だった」

ぐっと椿は言葉を呑み込む。男性経験のことを言っているのなら、確かに初心で幼稚だ。

反論できずにいるとすばやく腕を引かれ、気がつけば仁の腕の中に抱き寄せられていた。

「椿にとって、キスは特別なものだったんだな」

腰に手を回され、不覚にも椿の心はドキリと揺らぐ。

「仁さんだって、どんなに私と体を重ねても、唇へのキスだけはしなかったじゃありませんか」

これまで体中のありとあらゆる箇所に唇を這わされたが、唇だけは触れてくれなかった。それがもどかしくてつらかった。

同時に、仁にとっても唇へのキスは特別で、心が伴わなければできないものだと悟った。

「抵抗があったのは確かだ。同意のない女性の唇を奪うのは気が引けた。だが、キスを避けたことで、君がそんなに思い詰めるとは思わなかったよ」

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