身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「口にしてはいけないと思っていた。俺が本気で絆されれば、君の逃げ道がなくなる」

首筋に悔恨の吐息を感じ、椿は身を任せるように仁の体にもたれた。

「言ったじゃありませんか、端から支配などされていないし、同意の上だって」

椿を支えるように仁は強く抱きしめてくれる。

椿はその大きな背中に手を回し、仁との隙間を埋めるべくきゅっと抱き返した。

「この関係を利用していたのは私の方です。私はずっと、仁さんに憧れていたから」

「本気で言ってるんだとしたら、君はすごく趣味が悪い。わざわざ七つも年が離れた、こんな傲慢で狡猾な男を選ぶ必要なんてないのに」

「だからこそ憧れたんです。それに、傲慢なんかじゃない」

人を思いやる気持ちが強いからこそ、椿と距離をとろうとしてくれた。

記憶の中にある穏やかで優しい仁こそ真実の姿なのだと、今ならわかる。

どんなに口調が変わっても、意地の悪い突き放し方をしても、彼の根底は変わらない。

「私の知らないなにもかもを知っているあなただから、強く惹かれた」

「椿」

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