身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
椿の体が重力を失いふわりと浮き上がる。椿を抱き上げた仁が、すぐ脇にあるベッドまでその身を運び、丁寧に座らせた。

「キス、してほしかったのか?」

仁の冷静な問いかけに、椿はこくりと頷く。

「……俺と一緒になることに、後悔はない?」

「はい」

椿を覗き込むようにして、仁の顔が近づいてくる。

ゆっくりと距離が縮まり、長い時間をかけ、ようやくふたつの唇が重なった。

大人しく触れ合っていたのは一瞬で、すぐさま開いた仁の唇と舌に絡めとられる。

口の中を撫でられるのは初めての感覚。体が勝手にびくびくと反応してしまう。

心地よいけれど少し怖い、まるで仁と初めて体を重ねた夜のようだ。

「っん……!」

キスは触れるものではなく、絡め合うものだと初めて知った。椿はたまらず声をあげ、仁の体を押し返す。

「あっ……仁さ――」

感極まって啼き声をあげようとした椿の唇に、仁が親指を押し付ける。

「しずかに。リビングに音が漏れる」

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