身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
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――高揚すると、すぐに眠ってしまうな。

すやすやと寝息を立てる椿をじっと見つめていた仁だが、しばらくすると上半身を起き上がらせシャツを羽織った。

年甲斐もなくがっついてしまったことを猛省する。

もっとゆっくりと、時間をかけて可愛がってやるべきだった。

お互い気持ちが急いていたこともあり、瞬間的に高まって極みに達し、椿はそれこそあっという間に、気を失うように眠りに落ちてしまった。

仁は腕時計を見て苦笑する。彼女と寝室に入ってからまだ三十分と経っていないではないか。

「せめて、ゆっくり休んでくれ」

椿を起こしてしまわぬよう寝顔にそっと口づけると、仁は寝室を出た。

椿を妻とすることに、迷いがないとは言えない。

――椿は自らの意志で俺を選んでくれた。

だが、本当にそれでいいのか。

『椿はきっとあなたのことが好きよ?』

かつての菖蒲の言葉が頭をよぎり、複雑な思いが込み上げてくる。
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