身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
椿の好意には気づいていた。それが恋や愛ではなく、憧れであるということも。

――俺を愛しているというのなら、それは錯覚だ。

自分にはないものを持っている年上の男に憧れを抱いただけだろう。

一過性のものであって、未来永劫続くものではない。恋に恋している状態と同じだ。

――このままで、いいわけはないが……。

だが、椿が仁を求めているのも事実だ。妻になりたいと、この身に命を宿してほしいとまで言う。

今この瞬間、椿は全身全霊で仁に熱を傾けてくれている。

仁は椿の願いを叶えただけであって、そこにやましさなど存在しない。

――本当に?

それはエゴではないのか。椿のためだと言い訳して、本当は自分が椿を手放したくないだけではないのか。

七つも下の無知な少女をかどわかし、手中に収めようとする自分は大罪人なのではないか。彼女を自由にしてやることこそが、真の思いやりではなかったのか。

――違う。椿はもう子どもではない。きちんと物事を判断できる大人の女性だ。彼女の意志を尊重すべきだ。

仁の妻になりたいと、椿自身が決意し望んだことだ。その想いに応えてなにが悪い。
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