身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
葛藤から逃げるように仁は寝室に背を向け、リビングの中央にあるソファに腰を落とす。

ローテーブルの上には、三段重ねのケーキスタンドを使ったアフタヌーンティーが配置されていた。

銀のクロッシュを持ち上げると、スコーンの入ったバスケットとアミューズが添えられている。

椿のためにと頼んだのだが、当の本人はぐっすり寝入ってしまった。

「シェフに申し訳ないことをしたな」

試しに下段のサンドウィッチに手をつけてみると、できたてに比べれば触感は落ちるものの、充分に舌を満たす味だった。

「……うまいな」

だが、椿が起きてくる頃にはきっと乾燥してしまっているだろう。椿には最高の状態のものを食べさせてあげたい。

ホテル自慢のティーも冷めてしまったことだし、一度下げてもらおう。

そう心に決めた瞬間。ふと椿の言葉が脳裏をよぎり動きが止まる。

『残すなんて、お料理を作ってくれた方に申し訳ありませんから――』

「……手をつけずに下げたと知られたら、叱られるかもしれないな」

思わず苦笑して、せめて自分の分は減らそうとローストビーフやオニオン、チーズの挟まったパイを口に放り込む。
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