身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
そうこうしていると、カチャという小さな音が響き、寝室の扉がわずかに開いた。

見れば、毛布にくるまった椿が扉の隙間からひょっこりと顔を覗かせていた。

「もう起きたのか」

仁が隣にいなかったことに驚いて探しに来たのかもしれない。

スコーンを手に声をかけると、椿は「あっ」と声をあげて目を見開いた。

「ひとりで食べてる……」

「え」

思わずスコーンと椿を交互に見る。椿の表情が悲しげに歪んでいった。

「……どうして起こしてくれなかったんですか」

「……起こした方がよかったのか?」

「当然じゃありませんか! ひとりで食べるなんて……」

どう当然なのか仁にはわからなかったが、椿は頬を膨らませて再び寝室にこもってしまった。

「っ、おい、椿」

慌てて仁はスコーンを置いて、寝室へ向かう。

扉に手をかけ、施錠されていることに気づき蒼白になる。今度はいったい、なんの地雷を踏んでしまったというのか。

「椿、開けてくれ」

ノックをすると『着物を着るので待っていてください!』という椿の慌てた声が聞こえてきた。

「着物は大変だろう。クローゼットに浴衣が入っているはずだ」

『いえ、大丈夫です、慣れてますから!』
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