身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
仁は短く息をつき、スタッフに連絡して紅茶を淹れ直すよう頼む。

しばらく経つと着物姿の椿が寝室から出てきた。

髪もアップスタイルにセットされているが、先ほどのような夜会巻きではなく、椿らしい捩じったお団子ヘアーに変わっている。

「髪型はその方がいい」

「ありがとうございます。メイクを直してきます」

椿はリビングのソファに置き忘れていたバッグを抱えると、バスルームに駆けこもうとした。

「いや、メイクはそのままでいい。どうせすぐ着替えることになる」

自宅に置いてある椿の洋服を秘書に持って来させている。菖蒲の着物を着続けているよりかは、幾分か気持ちが楽だろう。

事情を知らない椿はポカンとしたが、特になにも聞かず仁の正面のソファに腰を下ろした。

タイミングよくバトラーがやってきて、紅茶を淹れ直す。ちらりとケーキスタンドに目をやってひと口も手をつけていないことを確認すると、スッと手を差し出して尋ねてきた。

「新しいものとお取り替えさせていただいてもよろしいでしょうか?」

気を利かせてそう尋ねてくれたようだが、仁が答えるよりも早く椿は胸の前で両手を広げる。

「いえ、このままで結構です! いただきます」

予想通りのリアクションに、仁はバレないように苦笑した。
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