身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
椿は上段のマカロンをぱくりとひと口頬張る。

「おいしい!」

「マカロン、好きなのか?」

「ええ。サクッと軽いのにキャラメルのような蕩ける食感もあって不思議ですよね。和菓子にはなかなかないお味ですから」

比較の対象は和菓子のようだ。厳格な和の家に生まれ育った椿らしい。

仁も上段のマカロンを口に運び、確かにおいしいとは感じたが、これだけ素直に喜べる椿が羨ましいとも思った。

考えてみれば、幼い頃からあまり感情を表に出したことがなかったか。

京蕗家の長男としての振る舞いを求められ、違和感を覚えることなくそのまま大人になった。だからこそ、祖父に命じられた結婚に疑念のひとつも抱かなかったのだろう。

――椿と出会って、俺は変わったのかもしれないな。

思えば周囲にいた人間は皆、京蕗家の長男と関わりを持つのに相応しい、作為的に選ばれた者たちばかりだった。

婚約者の妹として出会った椿だけが例外で、自由をその身で表しているかのように奔放な女性だった。真っ直ぐに生きれば人はこう育つらしい。

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