身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「ままー、ごはん、ごはん」

結梅が早くあっちに行こうと椿を引っ張る。

声を聞きつけたのか、先に目を覚ましていた仁がリビングから顔を覗かせた。

「おはよう、椿。部屋に朝食を運んでもらった。食べられそうか?」

「あ、うん、ありがとう」

「ごはんー!」

結梅に袖を引っ張られ、椿が立ち上がろうとすると。

「っ、きゃ……」

前がはだけそうになって、慌てて衿を閉めた。帯はゆるゆるで衿はだるだる、おまけに下着を身に付けていないではないか。

焦った椿を見て、仁がニヤリと笑みを浮かべる。

――もしかして、眠っている間に仁が着せたの?

お人形のように浴衣を着せられている自分を想像して、かぁっと頬が熱くなる。そんなことをされても目が覚めないほど深く眠っていたのだろうか。

仁のことだ、ここぞとばかりにいろんなところを眺めて触れたに決まっている。

しかも、下着は着せてくれないなんて。

まぁ、そもそも悪いのは、なにも着ずに熟睡してしまった椿だし、浴衣を着せてもらえただけ感謝しなければいけないと、重々理解はしているけれど。

泣きそうな顔で仁を睨みつけると、仁は涼しい笑みを浮かべて椿のもとにやってきた。

結梅には聞こえない声で、椿の耳元にそっと囁く。

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