ホテル王に狙われてます!ハニートラップから守るはずが、罠にかかったのは私でした?!

壇上に上がったジョーは、マイクを手に取ると、英語で来場者に挨拶をした。

美夕には何を話しているのか分からなかったが、高遠副社長が美夕の耳元に小声で
通訳してくれた。
しかし、あまりの至近距離と耳元にかかる吐息、それに心地いい高遠副社長の声
は、美夕の心臓には悪く、説明を聞いている間、美夕は卒倒しそうなくらいドキドキ
していた。

ジョーの挨拶が終わると、歓談の時間となった。

ジョーの元にも、高遠副社長の元にも、絶え間なく人が来ては挨拶をし、去っていく。
ビュッフェスタイルで、皆、食べながら飲みながらだったが、そんな状況もあり、
高遠副社長と美夕は、最初にシャンパンを口にしたくらいで、食事を取る余裕はなかった。
すでに一時間以上、動くことも出来ず、その場に立ちっぱなしだった。
時々、高遠副社長が気遣って声をかけてくれた。

「美夕、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。恭一郎さん。」

と、美夕は答えた。しかし、実は美夕は限界に来ていた。
着崩れを心配し、いつもよりもきつめに帯を締めてしまっていたからだ。
美夕は必死に耐えたが、かつてないほどの緊張もあったせいか、
どんどん気分が悪くなり、顔色も青ざめていった。
この人の挨拶が終わったら、お手洗いに行かせてもらおう。
そう思っていたが、話が長く、なかなかその場を立ち去らない。
美夕の額には冷や汗が出て来た。

「Would you excuse me a minute?」

「Oh,sure.」

『え?どうして?』

美夕の英語力でも、高遠副社長が話を中断したのが分かった。

「美夕、歩ける?」

「は、はい。」

と答えると、高遠副社長は、美夕の手を取り、ゆっくりと歩き出し、パーティー会場を
出た。

美夕は歩くのも精一杯で、ふらつきながらも、何とか高遠副社長に付いて行った。
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