むり、とまんない。
「胡桃……」
「っ、やっ……」
耳に熱いものが伝って、また体が震える。
「私は遥じゃなきゃ、やっ……」
遥しか、見えてない。
けれど遥は何かに焦るように、ただただキスをふらせるだけ。
「っ、はっ……」
そしてやっと離れたときにはお互いの息が上がっていて。
「はる、か……」
「っ……」
抱きしめられる直前。
前髪で隠れて、ほとんど表情は見えなかった。
でも、一瞬だけ見えたその顔は、ひどくつらそうに歪んでいて。
「ごめん」
強く強く、体全体を包み込まれるように抱きしめられた。
「ごめんな」
どうして謝るの、とか。
どうしてそんなにつらそうな顔をするの、とか。
いろいろ言いたいことはあったのに。
「胡桃……」
私をよぶ遥の声に、ぎゅっと胸がしめつけられて。
「っ……」
なにも、言えなかった。