体育祭(こいまつり)
 パンッ!

 スタートを告げる空砲。

 健二が走り出した。私は瞬きも忘れて見た。健二の走る姿を。
 それは徳山君のフォームとは比べものにならないほど、乱れたフォーム。

 でも、早い! 早いよ!

 がんばれ! がんばれ!! 健二、がんばれ!

 一位の走者に後もう一歩というところでバトンを第二走者に渡し、健二は肩で荒く息をして、トラックから出た。その顔は悔しそうで。

 でも、すごくかっこよかったよ、健二。

 私は再びあふれ出した涙を健二のタオルでぬぐった。

 息を整えた健二は遠くを見ていた。それは、いつもの健二とは違って見えた。その健二が、こちらを、向いた。

「……」

 なんて目をするんだろう。

 健二は眩しいものを見つめるかのように私を見ていた。まっすぐすぎる視線。

 息が、できない。

「りり?」
「健二が……」

 見てるの。

 どうしよう。音がする。もしかしたら、もっと前から……?

「あ、手を振ってるね」
「うん」

 私たちに手を振る健二を見つめながら、私はなぜかまた泣いた。健二のタオルに顔を埋めて……。
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