体育祭(こいまつり)
「四百出るなんて知らなかったよ」

 戻ってきた健二に悠香が声をかけた。

「ああ、俺も出るとは思ってなかったよ」
「え?」

 悠香と私の声が重なる。

「俺、補欠だったの。ほんとに偶々出ることになっちまって、いい迷惑だ、まったく」
「その割には悔しそうだけど?」

 悠香の言葉に、

「まあね。戦うからには勝ちたいんすよ。男は」

 すねたように言う健二。

「でも、がんばったよ。すっごくかっこよかったよ」

 私が自然とこぼした言葉に、下を向いていた健二が顔を上げた。

 視線が合う。健二はちょっと意外そうな顔をしていた。

「そ? まじで? そりゃ、ま、嬉しいけど」
「うん。かっこよかったよ、健二の割には」

 悠香が笑顔で言い返す。その笑顔が寂しく見えた。

「悠香、お前、一言多いんだよ。って、りり、このタオル、すげーことになってるんだけど」

 涙でぐしゃぐしゃになったタオルを見て、健二が言う。

「しょ、しょうがないじゃん」
「まったく、泣き虫」

 健二はそう言って、私の頭をぐしゃっとなでた。そして、得点版を見る。

「あーあ、あと少しだったのになあ」

 二位との点差はわずか四点だった。

「でも、みんながんばったよね」
「うん」
「おうよ」

 私の言葉に悠香と健二は頷く。その顔には満足げな笑みが広がっていた。

「また、次は来年だね」

 私が言うと、健二は表情を変えた。ふっと目を伏せて、

「来年、ね……」

 と小さく言った。
 それは酷く不本意そうに響いた。
< 21 / 24 >

この作品をシェア

pagetop