体育祭(こいまつり)

 もし……健二に彼女ができたら?

 今まで考えたことなかった。
 それは、寂しい。うううん、寂しいなんてものじゃない。

 いやだ。

 もし相手が悠香だったら? 悠香は大好きな親友。健二も親友。大好きな二人が付き合う……。

 だめだ。

 私、悠香でも、悲しい。

 健二はいつも私のそばにいて、親友みたいで。でも、だからこそ、私から離れてほしくない。いつもそばで笑っていてほしい。

 それに。音が。
 どくん。
 するのはなぜ?
 ちゃんと考えて。
 健二を。
 私は。
 本当は。


「悠香! 私……」
「……うん。分かっていたよ。本当に鈍感な子だねえ、りりは。行っておいで」
「うん! ごめん、悠香」
「もう何度も聞いた。ほら早く!」

 私は寂しそうに歩いている健二の背中に向かって走った。


「健二!」

 健二は振り向いた。不機嫌そうな顔をして。

「なんだよ。悪かったな。無理やりキスして。どうせ断るんだろ? ほら、聞くぜ」

 開き直った言い方の割りには寂しさがにじんでいた。

 私はそんな健二の目をしっかり見つめた。

「? なんだよ、早く言えよ」

「うん。じゃあ言う。私も健二が好きみたい」

 健二は、一瞬理解ができなかったらしく、だらしなく口を開けた。

「まじ? それ」
「まじ」

 私は恥ずかしくてうつむきながら答えた。
「! やったー! まじで? まじで? やべー、好きだ! りり!」

 健二は私を抱きしめた。
 健二の汗の匂いがする。でも嫌じゃない。

 大きな腕の中にすっぽり包まれて、私はどきどきして、それなのに安心した。


 帰りの電車がにぎやかだったのは言うまでもない。
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