体育祭(こいまつり)
 私、薄情なのかな……。

「いいんじゃない? 最近りり、元気になってきたから、私も嬉しいよ」
「そっか……」
「徳山君は、もう、いいわけ?」
「え? どういう意味?」
「もう何も思わないの?」

 難しい質問だった。

「うーん、もともと恋愛対象ではなくて、走る姿を見てどきどきするのが至福のときだったの……。だから、今でも廊下の窓から見ることあるよ。やっぱり綺麗なフォームだと思うし……」
「はた迷惑な感情だねえ、それは」
「だね」
「体育祭、もうすぐだね。今年はりりの周りは荒れそうだ」
「ちょっと、そんなこと言わないでよ! 何も起こらないよ」
「私にも恋来ないかなあ」
「悠香。おばちゃんみたいなこと言わないでよ」

 そう言った私に、悠香は真剣な瞳を向けてきた。

「?」
「……りり。……もし、健二が何かアクションを起こしてきたら、真剣に考えてあげてね」
「え……?」
「別に、付き合えとは言わない。ただ、茶化さずちゃんと考えてあげて。でないと私が救われないから」

 私の胸がどくんと鳴った。悠香、もしかして……。

「悠香……!」
「いいの。私のことは。好きな人が自分を好きになるなんて奇跡はそうないってことぐらい分かってるから。それから、りりは自分を責めないでいいから! りりが悪いわけじゃないから。仕方ないことなんだから」
「……ごめんね」
「何に対して?」
「……わからない。でも、ごめん、悠香」

 悠香はじっと我慢していたんだ。自分の好きな人が、自分の親友を追う姿を見るのはどんなに辛いだろう。

 私は泣いていた。

「なんでりりが泣くのよ。もう、本当に仕方ない子だねえ」

 いつも強気な悠香の声が震えていた。

「うまくいかないね。心って」
「そうだね」

 私も傷ついた。でも、私はいろんな人を傷つけているのも事実なのだ。

「みんな両想いの世界があればいいのに」
「そうだね」

 私たちはしんみりとしながら、七月になった空を眺めた。

「眩しいね」

 そう言って二人で泣いた。
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