体育祭(こいまつり)
そして、初日最後の競技が始まろうとしていた。
男子長距離走だ。
傾き始めた太陽が、男子たちを照らしている。男子たちはストレッチなどをしてスタート地点に立っていた。
パン! と乾いた音が響いた。
いっせいに走り出す男子たち。
徳山君はやっぱり綺麗な走り方をして、先頭グループの中にいた。そして、意外なことに健二もその中にいた。
「健二、ずっと走りこんでたんだよ」
「……そうなんだ」
彼らの瞳はとても澄んでいて、まっすぐ前に向けられていた。何が見えているんだろう。
規則的な息遣いが聞こえてきそう、こんなに遠いのに。
多くの声援が飛び交っているのに、私には聞こえなかった。時間が止まっているような気がした。その中で長距離走をする男子たちだけが動いているように思えた。
グラウンド五周の間に、段々差がついていく。
私の目は徳山君を見ていた。彼の走りに乱れはなかった。
陸上部と競争は他の男子はきついよね、と思う。ふと健二を見ると、先ほどより口が開いていた。
ジンクスなんて、もうどうでもよかった。
がんばれ! がんばれ!
その言葉しか頭に浮かばなかった。
先頭集団がグラウンドを出て行った。
「どうなるかな」
「わかんないね」
自然と口の前で指を組んで祈っていた。心臓がうるさい。
がんばれ!
外周三周の時間が酷く長く感じられた。太陽が段々と沈んでいく。
「……ねえ、りり、どうするの? キスされそうになったら」
悠香が遠慮がちに聞いてきた。
「今はわかんない。そのときになってからじゃないと」
「どっちに勝ってほしいの?」
「それもわかんない。二人ともがんばってほしい」
「……そっか……」
悠香が自分の足の指先を見つめながらそう呟いた。
「酷い女だと思う?」
「うううん、そういうんじゃない。ただ、どんな気持ちなのかなと思って……」
「考えないようにしてるだけかもしれない。それに、本当にキスされるかなんてわかんないよ。徳山君はあれから何も言ってこないし、健二だって本当は私のこと思ってないかもしれないじゃん。」
「それは、違うと思うけどな。だって、でなきゃあんなに必死にならないよ」
「……悠香……」