冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「それから、有里子さんについてだが」

「母が、なにか?」

「いずれ三橋社長から借りた金を返して、すっぱり縁を切るつもりだと言っていた。だが、そうは言っても俺たちが縁続きになった以上、そうすんなりいくかも怪しい。三橋は鼻の利く人間だ。自分に利点があると思えば、そう簡単に有里子さんを手放さない可能性もある」

 実父は、おそらく仕事はできる人間なのだろう。しかし、母や私だけでなく京子らへの接し方を見ただけでも、どこか人間として破綻しているのだと思う。
 一矢さんの言う通り、母や私に利用価値がまだあると思えば、たとえ肩代わりした金を返したところで、なんやかんやと理由づけて私たちを縛りつけようとするのも否定できない。

「そうかも、しれませんね」

「そこでだ。俺が三橋社長から借りたお金を建て替えることにした」

「え?」

 本当のところ、一体いくらぐらい借りていたのか私は知らない。母は自身が働き出した当初、少しずつでも返していきたいと申し出たが、父に拒否されている。それはまだまだ母を側に置いておきたいという思いからだったのだろう。もっとも、途中からは本妻のサンドバックになってくれる存在としてキープしておきたかったように感じるが。
 とにかく、そう簡単に返せるような額ではないだろうと思う。

「優のおばあさんだが、当時の状況よりはずいぶん回復しているとはいえ、毎月の薬代や再発した際にさらに治療代がかかっているし、定期検査の費用もある。なんだかんだ言って金が必要なのが現状だ。そもそも、そんな状態の実母から長年離れているのも、有里子さんとしては気が気じゃなかっただろう。だから、三橋社長へ返す金は俺が肩代わりして、有里子さんには実母の元へ行く準備をしてもらっている」

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