冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「今から看護師を目指すのは大変かもしれないが、医療事務とか、そうだなあ……看護助手を想定した資格に挑戦するのはどうだろうか?」

「看護助手?」

「ああ。医者や看護師の手助けをする仕事だ。特に資格は求められないが、介護系の経験が役立つと思う」

 思いつきでできる内容ではない。でも、なにかに挑戦するのはいいかもしれない。私に時間はいくらでもあるのだから。

「いつかここを離れたときに、優と一緒に働けたら楽しそうだと……」

「え?」

 どこか照れたような表情の一矢さんに魅せれて、彼から目が離せなくなる。

「家でも職場でも、一緒にいられるだろ」

 ぶっきらぼうにそう言い放った一矢さんに、唖然とした。
 そんな心躍るようなお誘いなら、私としては大歓迎だ。

「す、すごく、幸せな提案ですね」

 帰ったら、早速いろいろと調べてみたい。一矢さんと一緒にいられて役にも立てるのなら、なんだってしたい。

「俺の予定では、数年のうちに子どもを作って、合間で無理のない程度に勉強してもらって……」

「へ?」

 資格などの勉強の話じゃなかった? 今、子どもとかなんとか聞こえた気が……。

「とっくに伝わっていると思うが、念のためはっきりと言っておく」

 今度は畏まった雰囲気で宣言してくる。だめだ、混乱してきた。

「俺が最初に言った言葉は一部撤回する。跡取りは考えなくていいが、子どもは欲しい。君とはなれ合うつもりしかない」

「なっ……」

「優のことは、一生手放す気はない。愛してるんだ」

 正面を向いていた一矢さんの視線は、走行が止まった今でも少しも動かない。そのどこか不器用でかわいらしくもある様子が、私の心を揺さぶる。

「わ、私も、一矢さんをあ、愛してるから、その……子どもも、欲しいです。そ、それに、一緒に過ごせるように、勉強をして準備したい」

 恥ずかしさで俯いてしまったものの、気持ちは伝わったはず。

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