冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
 翌朝も早くに目を覚ますと、音を立てないように部屋を出た。

 そっと玄関を見やれば、一矢さんの在宅時には必ず出ている革靴が今朝は見当たらない。
 まだ六時前だというのに、彼はもう出勤しているのだろうか? すっかり寝入ってしまって気づいていなかったが、もしかして夜中に呼び出しがあったのかもしれない。

 あれこれと考えながら、足早にキッチンへ向かう。
 冷蔵庫の前で立ち止まると、昨夜私が張り付けたメモははがされて、代わりに一矢さんからのメッセージが残されていた。

【ごちそうさま】

 それは、昨日となにひとつ変わらないものだった。
 けれど、その下に少しだけ乱れた字でもうひと言加えられていた。

【呼び出しがあった】

 もしかして、私が朝食を準備してしまわないように、気を遣って知らせてくれたのだろうか。
 急いでいただろうに、こうして知らせてくれた彼の気遣いに、再び温かい気持ちになってくる。

「よし!」

 一矢さんのメッセージに気をよくして、朝からがぜん張り切って家事に取り組んだ。
 今日は少し遠くなるが、先日行ったよりも敷居の低いスーパーに行くつもりだ。それから、図書館と文房具屋にも行きたい。

 早めに昼食を済ませると、いつになく軽い足取りで外へ向かった。
 まずは図書館だ。仕事を辞めて持て余し気味だった時間を、なにか有効に使いたい。でもお金はかけられないとなれば、図書館はうってつけだ。
 早速利用カードを作ると、二冊の小説と料理の本を借りた。

 それから文房具を扱う店に行こうと思っていたが、図書館の数軒先にかわいらしい雑貨屋を見つけて入ってみた。
 目的はメモ用紙。一矢さんとのやりとりに、味気ない白い紙ではなくてかわいらしいものを使いたいと探しにきたのだ。

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