冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「俺は会ったことないけど、三橋の娘はあの店にずいぶんと入り浸っていたはずだよ」

 まあそれぐらいの夜遊びは咎めるまでもないだろうと思った俺は、ずいぶんと甘かったようだ。

「そこで毎晩のように男漁りをしてたって、かなり有名だぞ」

「……」

 予想外の言葉に、口をつぐんだ。

「男をとっかえひっかえする〝三橋の問題児〟。会ったことすらない俺でも耳にするぐらいだ。相当知られた話だろうな。ただ、関係を持った奴だってさすがに自身の評判を落としかねないって、楽しむだけ楽しんで口を閉ざしてしまうから、あくまでバー内での公然の秘密ってとこだな」

 にわかに信じられない話だが、その店によく出入りしており、交友関係の広い良吾が言うのならその通りなのだろう。あまりの事実に言葉が出てこない。

「なんでまた、そんなやつが一矢の嫁になるんだよ」

 どこか怒りを含んだ口調の友人にハッとして、いつの間にか強張っていた体から力を抜いた。
 正直、俺自身もそんな話を聞かされたら心穏やかにはいられないが。

「好き勝手してきた薄汚れた女だぞ。散財もすごかったらしくて、いつもブランド物で身を固めてたんだとさ。そんな女、一矢の財産を食いもんにして、浮気するのが目に見えてるだろ」

 あまりの事実に、考えるのを放棄したくなってしまう。
 そんな奔放な女性が自分の妻になるとは、わずかに抱いた温かな希望も早々に消え失せた。

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