冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「一矢ばかりが貧乏くじを引かされてる」

 俺の代わりに腹を立ててくれる良吾に、少しだけ報われた気になる。こいつに出会えたのは、俺の人生の中で一番の財産だ。面と向かっては言ってやらないが。

「なあ、一矢。お前、俺んとこ来いよ」

 なんだかプロポーズでもされている気分だと思ってしまったあたり、俺も多少は酔いが回っているのかもしれない。

「俺の秘書として雇ってやる」

「ありがたすぎる誘いだが、遠慮しておく。お前の横には、美人秘書がお約束だろうが」

「そうだけどさあ」

 否定もしない友人に、思わず苦笑した。

「とにかく一矢、その結婚はなんとしてもはねのけろ」

「そういうわけにもいかないさ。親同士はもうすでに、話をまとめてしまったようだ。そこに俺の思いなど関係ない。政略結婚なんて珍しいわけでもないだろ。元からその覚悟はしていたんだ。せいぜい、籍を入れるぐらいはするさ」

「だとしても……」

 おかしなもので、俺以上に納得いかない顔する良吾を見ていれば、逆にこちらの方が落ち着いてくる。

「念のため、三橋の問題児についてもう一度聞いておいてやる。もし本当に真っ黒な女なら、一矢が相手をする必要なんてないからな」

 良吾の気持ちはありがたすぎるほどだ。
 こいつは俺を一途だと言う。それは必ずしも否定はしない。

 付き合っている女性がいるのに、ほかへ目を向けるなんてありえない質だ。もちろん、相手にもそれを求める。でもそれは一途というだけではなくて、少々潔癖なきらいもあると感じている。
 誰にでも簡単に体を許す性に奔放な女性など、正直受け入れる自信はない。

「ありがとな、良吾」

 ならば最初から牽制をして、突き放しておくのがお互いのためだろう。
 それで相手が浮気でもするのなら、即座に離婚すればいいだけだ。

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