冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「ちゃんと矯正されてから嫁いできたとか?」

 そう言った良吾だが、その表情はそんなわけないかと物語っている。それほど優の悪い噂は蔓延しており、簡単にどうこうできるものではないと感じているのだろう。

「それでも、元々の性格や長年の習慣が百八十度変わるとは思えない。彼女、俺とちょっと手が触れただけで驚いたように腕を引いていたし、面と向かって話すのだって緊張しっぱなしだ。視線が合うこともまずないぞ。男慣れどころか、男と接した経験もなさそうなんだが……」

 三橋の問題児が男慣れしているとはいえ、俺とは打ち解け合っているわけではない。むしろその逆だ。だとすれば、緊張するのもわからなくはないが……それにしても不自然だ。
 最初にきつく牽制したのだ。ともすると反抗的な態度を示すかもと、噂で聞く彼女の人物像から想像していたが、そうはならなかった。

 まさかあれが演技だとは思えない。それに、演技だとしてもそうする意味がわからない。

「それは……妙だね」

「だろ」と頷きながら、最近の優の様子を思い浮かべていた。

 男漁りをしてきたような女性が、あんな態度をとるものだろうか?
 さすがに結婚をして自重したとしても、俺は夫婦として彼女の相手をまったくしていない。女性の事情はよくわからないが、それで我慢できるものだろうか。
 おまけに、彼女はまだずいぶんと若いんだ。異性関係はともかく、遊び歩きたい盛りなんじゃないか?

「なんだか彼女が健気すぎて、たまにかわいく見えてしまうんだが」

「お前、それって欲求不満じゃないのか」

 いくらご無沙汰とはいえ、それとこれとは別だと否定しておく。


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