冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「彼女、俺と顔を合わせないようにしているみたいで、いつも部屋にこもりがちなんだよ。そのせいか、たまに出てきているのがわかると、偶然を装って顔を合わせようとしてるんだよなあ、俺」

「なにそれ、怖っ。一矢ってストーカー気質の男だったんだ」

「失礼なやつだな」

「キャラが変わってるし……」とかなんとか呟く良吾を横目で睨んだ。


 いや、自分でもちょっとどうかと思うときはある。
 彼女のいじらしい献身的な姿を知ると、つい気になって目で追ってしまう自分に、自身が驚いたほどだ。内容に変化のない冷蔵庫の伝言メモを毎回気にしてしまうあたり、相当おかしくなっている気がする。

「じゃあさあ、一矢。今度俺が確認してあげるよ。女の子に関しては、俺の目の方がたしかだし」

 否定はしないが、なんとも面倒な話だ。
 ただ、やはり優に対する違和感はぬぐえず、他人の目からも判断して欲しいとも思う。

「変なことはしないな?」

「一矢の考える〝変なこと〟の内容を聞くのも面白そうだけど……」

 この一カ月間、予想外にも俺から愚痴が出なかったせいか、あれほど心配してくれていた良吾の態度はかなり解れているようだ。
 思わずジロリと見やれば、途端に慌て出した。

「しないしない。もちろんしないって。そうだねぇ……とりあえず一度、緒方家に招待してよ。結婚したって聞いて、友人が会わせろって騒いで聞かないとか言ってさ」

 初っ端から突き放した彼女を友人に紹介したいなどと、どの面を下げて切り出せばよいのかと迷うところだが仕方がない。

 ほかにもなにやら方策を考えはじめた良吾に、「噂とはずいぶん様子が違うんだ。くれぐれも暴走しないでくれ」と再度念を押して、この場を解散した。

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