冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「優。ケーキは預かってもらって、ついでに隣のお店でランチを済ませておこう」

 店員とのやりとりを終えた一矢さんが、私の方を振り返って声をかけてきた。

「え?」

「いいですか?」

 私の返事を待たずに、一矢さんが店員に確認をする。

「もちろん。よけておきますね」

 そのテンポについていけず出遅れてしまい、店を出ようとする一矢さんに慌てて続いた。

「勝手に決めてすまない。今から帰って食事の準備をするには、時間があまりないから」

「い、いえ。かまいません」

「さっき話していた店員の、息子夫婦がやっている店なんだ」

 さっと視線を向けた隣の店は、真っ白な壁に蔦を這わせた素敵な外観をしていた。
 それほど敷居が高くなさそうで、いつも通りのカジュアルな服装で来てしまった私としてはありがたい。それでもこの格好は砕けすぎているかもしれないが、一矢さんはなにも言わないし、大丈夫なのだろう。

 気がかりなのは、店主と一矢さんの関係がわからないことだ。さっきのケーキ屋の店員もそうだけど、プライベートで付き合いのある方に、私の存在を知られてよいのだろうか。私が原因で一矢さんが女性と別れたのだとしたら、きっとよい感情は抱いていないはず。

 迷いつつ、促されるまま席に着いた。
 

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