冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい」

 とにかく謝るしかなかった。癖のように口を突いて出る私の謝罪など、軽いものに聞こえるかもしれない。それでも、繰り返すしかない。

「ごめんなさい」

「優、大丈夫だ。落ち着いて」

 そっと背中を撫でてくれる一矢さんの優しさに、さらに胸が締め付けられる思いがした。騙された側の彼に気にかけてもらう資格など、私にはない。

「ごめん、なさい……」

 ついには涙を流してしまった私が落ち着くのを、一矢さんなにも言わずに待ってくれた。


「優。謝るのは俺の方だ。なんの落ち度もない君を傷つけてしまって、本当に申し訳なかった」

 私がやっと泣き止むと、今度は一矢さんが謝罪の言葉を口にした。頭を下げる一矢さんに慌ててしまう。

「か、顔を上げてください。あなたはなにも悪くないですから」

 そう必死に訴えても、彼は首を横に振って否定した。どこか後悔するような表情を見せた一矢さんは、静かに語りだした。

「俺たちの結婚は、本当に突然に決まったものだった。でも、いずれはそういう話も出るだろうと覚悟していたから、俺にはそれほど抵抗がなかった」

 それじゃあ、お付き合いしていた方はどうするつもりだったのか。まさか、付き合い始めた頃から別れる前提で……。

「うまくやっていけるといい、そう思っていた。だけど、〝三橋の娘〟との結婚が決まったと友人に話したら、とんでもない噂を聞かされた」

「私が、あ、愛人の子だという話ですか?」

 一矢さんに言われるより先に自己防衛するかのように告げると、彼は若干驚いた顔をした。

「いや……そうか。優はこれまで、そうやって周囲から心無いことを言われてきたんだな」

 まるで慰めるように、一矢さんがぎゅっと私の手を握ってくる。

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