冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「良吾だけに頼らず、ここ数日、俺もいろいろと調べさせてもらった。そこで、優が三橋の本妻の子ではない事実も、三橋陽の家出の話も知った。それから君には話していなかったが、先日、有里子さんと話をさせてもらったんだ」

 唐突に飛び出した母の名に、目を見張った。母からそんな話は、まったく聞いていない。

「有里子さんには、俺から優に話すまでは黙っていて欲しいとお願いしてある。彼女から……いや、お義母さんからは、君たち親子がこれまでどう過ごしてきたのかを聞かせてもらった」

 母を〝お義母さん〟と呼んだ一矢さんに驚きを隠せなかったが、それよりも今は目の前の問題だ。
 陽ではなく、私が来てくれてよかったとは言ってくれたが、愛人の子として周囲に疎まれてきた私の存在など、マイナスにしかならないのに。

「有里子さんの話を聞いて、すべて把握できた。優……」

 一矢さんが顔を上げるように促してくる。こんなに優しい人を、私は今日まで騙し続けてきたのだ。それなのに、図々しく思いまで寄せて……。
 ここまで来たら逃げていても仕方がないと、覚悟を決めて視線を合わせた。

「君を傷つけてしまい、本当に申し訳なかった。もし君が許してくれるのなら、このままこの生活を続けてはくれないだろうか?」

「え?」

 恨み言のひとつも言われても仕方がないと思っていた。怒鳴るような人ではないけれど、それぐらいされても当然だと思い込んでいた。

 それなのに、一矢さんは許しを請うだけでなく、この生活を続けて欲しいと言う。

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