冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「いくら冷たく突き放しても、優はいつも俺を気遣って尽くしてくれた。俺に不快な思いをさせないようにと、自分はいつも遠慮して……」

 後悔を滲ませた一矢さんの表情を、じっと見つめる。

「男漁りする女性などに思いを寄せてもむなしだけだと、ずっと自身の心にブレーキをかけてきた。だが、それも限界だった。ここまで尽くしてくる女性を、どうして好きにならずにいられるというんだ」

 一矢さんの言葉をにわかに理解できない。ただ、熱い視線を向けてくる彼から、顔を背けられなくなってしまった。

「優、俺は君を愛している」

 ドクリと高鳴った鼓動は、言われた言葉を理解するにともなって、どんどん早鐘を打ち出した。

「一矢さんが、私を……?」

「ああそうだ」

 信じられない言葉に、喜びがあふれてくる。同時に、どうしてと疑問も押し寄せてくる。

「愛人の子、でも?」

「そんなものは関係ない」

「で、でも、一矢さんには……」

 私がなにを言い出すのかと、一矢さんが伺うように見てくる。

「お付き合いしていた女性と、お子さんがいるんじゃあ……」

「……なんの話だろうか?」

 困惑する一矢さんを、こちらも同じような表情で見つめる。

「瑠璃さんって……」

「それは俺の姉の名だが?」

 一矢さんの、お姉様?
 そうか。あのケーキ屋とは付き合いが長いと言っていたはずだ。それは家族ぐるみのものだったのかもしれない。

 すっかり瑠璃さんがお付き合いしていた女性だと思っていたが、違ったようだ。気を取り直して、それではと話を続ける。

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