冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「君のすべてが欲しい。俺と、本当の夫婦になってくれないか?」

 言われている意味がわかると、ますます顔が熱くなってくる。
 今はまだ朝で、外は明るくて……なんて、往生際悪く言い訳する自分もいる。けれど、思いが通じ合った嬉しさに、自分もそうしたいと思った。一矢さんのすべてが欲しい。彼にもっと近づきたい。

「……はい」

 精一杯の勇気で答えると、一矢さんはすぐさま私を抱き上げた。

「きゃぁ」

 落とされないように、思わず彼の首に縋りついてしまう。
 そのまま連れていかれたのは、私がまだ一度も足を踏み入れたことのない一矢さんの寝室だった。彼は大きなベッドへ迷うことなく向かうと、そこにそっと私を下ろした。

「本当は、ずっと前から君をここに連れ込みたいと思っていた」

 切なげな視線に、ドキリと胸が跳ねた。今の一矢さんは先ほどまでの穏やかさは鳴りを潜め、熱の孕んだ視線で私を捉えてくる。

「君に、恋焦がれていた」

 一矢さんは私がここへ来た初日に冷淡な姿を見せた以外は、いつだって冷静で物静かな様子だった。声を荒げるなんて一度もなくて、私とは違って豊富な人生経験に裏付けられた大人の男性だと思っていた。
 でも、今の彼からはどこか急いたような余裕のなさを感じる。

「優が欲しくて欲しくて、おかしくなりそうだった」

 まさかそれほどまで熱く求められていたとは思ってもいなかった。
 気持ちを伝えてくれる一矢さんにひと言でも返したい。けれど余裕がないのは私も同じで、されるがままになってしまう。せめて抵抗しないことで、この行為を受け入れているのだと伝えたい。

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