冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
 一矢さんが近づいてくるのに合わせて、今度こそそっと瞳を閉じた。
 温かく優しい口づけは、すぐに激しさを増していく。唇をなめられた驚きで思わず口を開けば、すかさず彼の熱い舌が侵入してきた。

「ん……」

 苦しい。それでも今離れてしまうのは惜しくて、必死でついていく。

 やっと解放されたときには、すっかり息が上がってしまった。

「すまない。無理をさせるつもりはないが、我慢できそうにない」

「だ、大丈夫です」

 か細い声でなんとか伝えると、わずかに微笑んだ一矢さんが髪を撫でてくれる。そのまま髪を一筋掴むと、彼はそこにそっと口づけた。

「綺麗な髪だ。初めて見たときから、触れてみたかった」

「で、でも、オシャレとは無縁で、ただ伸ばしただけで……」

 同年代の子はみんな好き好きに染めたりパーマをかけたりと、オシャレを楽しんでいる。それなのに私は、なにもしていない。

「なにを言ってる。こんなに綺麗なんだから、余計なことをしたらだめだ」

 不思議なもので、一矢さんがそう言ってくれるのならこのままでいいじゃないかと思えてくる。

「あ、ありがとうござ……」

 最後まで言い切る前に、再び口づけが降ってくる。

「好きだ」

 耳もとで囁かれて、たまらず体を震わせた。
 そっと私を押し倒すと、一矢さんは首筋に顔を埋めた。

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