メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

「ほら」
安西が差し出す手につかまって立ち上がる。大きな温かい手は、灯里の手をすっぽりと包んだ。そのまま手をつないで歩き出す。

冷えていた手に安西の熱が伝わる。これからはこの手を離さなくてもいいんだ。
そう思うと、心にも熱が伝わっていった。

部屋に戻ると、厳太郎と葵が来ていた。手をつないだままの安西と灯里を見て、厳太郎は残念そうに言う。

「なんじゃ。灯里ちゃんはほだされたんか。こんなやつよりもっといい男をわしが紹介してやるのに」

「じいさん、これはどういうことだ。どうして勝手に灯里を連れていった」

「おまえが姑息なことをするからやろ。他人様を巻き込んで、偽装結婚などというくだらんことをしおって。バカもんが」

厳太郎が一喝し、不穏な空気に灯里はオロオロした。

「おじい様、わたしも悪いんです。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「灯里ちゃんは相手がおまえじゃなかったら、もっと幸せな結婚生活がおくれたやろ。さっさと離婚して灯里ちゃんを解放してやれ」
厳しい口調で叱責する厳太郎を、安西は真っすぐに見つめた。

「じいさんたちには嘘をついて悪かったと思ってる。すまなかった。でも、灯里とは別れない。これからは本当の夫婦として二人で生きていくと決めた。どうか見守っていてほしい」

「灯里ちゃん、ほんまにええんやな?陽大と離婚せずに、ほんまもんの夫婦としてやっていくんやな?」
深く頭を下げる安西を厳太郎は厳しい目で見、灯里に向かって問いかけた。

「はい。本当に申し訳ございませんでした。どうぞよろしくお願いいたします」
灯里も安西の横で深々と頭を下げた。

「みんなもそれでええか?」
厳太郎が大きな声で呼びかけると、隣の部屋から安西の父母、灯里の祖父母が入ってきた。


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