メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
「灯里ちゃん、本当にごめんなさいね。これからもよろしくね」
義母が優しく抱きしめてくれ、いつもの甘い香りが灯里を温かく包んだ。義父は安西の頭をペシッと叩きながら、「灯里ちゃんを大事にしろよ」と言った。
祖父母はそんな灯里を遠巻きに見ている。灯里は陽子の腕からそっと抜け出すと、祖父母に手を差し出した。
「おじいちゃん、おばあちゃん、嘘をついてごめんなさい」
「いんや、元はわしが悪い。わしが勝手に応募したのがあかんかった。灯里は村のためを思ってくれたんやろ?灯里、今からでも村に戻ってきていいんやで」
祖父は灯里の手を両手で包むと優しくさすった。
「ううん。私、陽大さんの家族になりたいの。人とは違う形で始まった結婚生活だったけど、それも楽しい思い出になってる。だから心配しないで」
祖父は顔をクシャッとゆがめると、安西のほうに向きなおった。
「安西さん、わしらは灯里が幸せになることだけを願ってます。どうか…、どうか灯里のことをよろしくお願いいたします」
「本当に申し訳ありませんでした。必ず幸せにすると誓います。どうぞよろしくお願いいたします」
安西が深々と頭を下げ、祖父もそれに応えた。
「よし!じゃあこれで決まりや。みんな移動するで」
厳太郎が号令をかける。
「灯里ちゃんが最初に行かなきゃだめなの。時間がかかるから。さあ、行くわよ」
葵がそう言って、灯里の背中を押しながら玄関へと連れて行く。
「え?どこに?」
部屋着のままなんですけど、と待ったをかけるが、「大丈夫、大丈夫」と葵はそのまま灯里を車に乗せて立ち去った。
「何が始まるんだ?」
呆気に取られて安西が問いかけるが、誰も答えてくれない。
みんな身支度を整えにばらばらになり、リビングには困惑した安西だけが取り残された。