メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

これは一体何事?

訊ねようにも誰もいないので、聞くこともできない。
扉をノックする音が聞こえ、祖父母が姿を現した。二人とも黒紋付と黒留袖の正装だ。

「灯里、別嬪さんやなぁ」
祖母が感嘆の声を漏らした。

「会長さんがわしらに灯里の花嫁姿を見せてくれたんや」
ありがたいことや、と祖父はウルウルと目を潤ませた。

灯里が貴船に来たときには、既にこの計画が立てられていたらしい。祖父母は、その時に偽装結婚のことを知り、厳太郎から謝罪をうけた。そして、灯里が結婚の継続を望めば半年後に結婚式をすると聞かされたそうだ。

まさか結婚式をすることになるなんて思いもしなかった。
でも、嬉しそうな祖父母を見ると感謝せずにはいられない。祖父母孝行ができて本当によかった。
三人でにこやかに写真に納まり、じゃあ式場で、と言って祖父母は出ていった。

またノックの音が聞こえ、安西が入ってくる。黒紋付の安西は目を見張るほど素敵だった。

「陽大さん、素敵」
灯里が思わずそう言うと、「灯里の方がずっと綺麗だよ」と安西は照れたように言った。

「結婚式のことは追々考えようと思っていたのに、じいさんはせっかちだからな」
安西は苦笑いした。

和泉家からは、安西の従兄弟たちや伯父夫婦、お世話になっている田之上夫妻も来てくれているらしい。彩芽は具合が悪いのに、絶対参加すると言って頑張ってきてくれたそうだ。

「今西さんは?」
心配して訊ねると、「さっき着いた。今西にも今日急に連絡がいったらしいが、なんとか間に合ったよ。俺が出席しないとかありえないだろ、って拗ねてた」と安西は笑った。

「実は指輪だけは用意してたんだ。灯里がこのまま結婚生活を続けてもいいと言ってくれたら渡そうと思って。これだけは、じいさんに出し抜かれずに済んだ」

安西はホッとしたように笑い、灯里の手を取る。

「灯里、俺と結婚してくれてありがとう。これからはずっと一緒だ」

灯里は小さく頷くと、満開の笑顔を見せた。

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