メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

灯里は驚きを隠せない。
なぜ事前に言ってくれないのだ。安西家の人たちは、サプライズが好きなのか?

厳太郎はスーツ姿に豊かなグレーヘアで、昔はさぞかしかっこよかったであろうと思わせる容姿をしていた。
反対に、灯里はいつものお団子ヘアー。服も〝ナチュラル〟と言えばいい感じに聞こえるが、ダボッとしたセーターにコーデュロイのスカートで、まるで学生のようだ。

「は、はじめまして。灯里です。よろしくお願いいたします」

動揺して口ごもってしまう。おずおずと顔をあげると、厳太郎は優しい微笑みで灯里を見ていた。

「灯里ちゃんは可愛らしいなぁ。うちの孫の嫁はみんな可愛いが、灯里ちゃんが一番可愛いで」

「おじいちゃん、みんなにそう言ってるんじゃないの」
晴夏が呆れたように言うと、「ばれたか」と言って厳太郎はガハハハッと笑った。

どうやら、灯里に一目会いたいと厳太郎は京都からやってきたらしい。義母が京都の出だということも初めて知ったが、実家が和菓子屋『京泉』だと聞かされ驚愕する。厳太郎は会長を務めていると聞いて、驚きも倍増だ。

『京泉』と言えば、知らない人がいないくらいの有名店だ。おそらく海外にもお店があるだろう。

義母は品があると思っていたが、なるほどと納得する。『京泉』のお嬢様が嫁ぐくらいだから、義父もいい家柄の出に違いない。初めて会ったときに思った通りだった。

こんなすごい家の嫁が灯里でいいのか?
少し不安になりかけたが、すぐにああそうだったと思う。灯里は期限付きの嫁なのだから、そんなことは気にする必要がないのだ。

この四国が灯里にとって十一番目の土地。あっちこっちと移り住み、気づけば二年半が経過していた。来月から行く関東が最後で、三ヶ月後には離婚するのだ。考えると胸がツキンとするが、初めから決まっていたことだ。

でも、結婚の終わりがみえてきたところに、祖父登場。しかも物凄い大物だ。

どうすんのよ、これ…

さあ行こうと先頭を切って歩く厳太郎の後姿を見て、途方に暮れる灯里だった。

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