メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
灯里は不二子ちゃんの後部座席から品物をどんどん降ろしていた。あれもこれもと三人が灯里の物を買いまくるので、華奢な不二子ちゃんはパンパンだ。
松山に二泊して、温泉を満喫してきた。元々温泉好きなのだが、部屋に露天風呂がついていたのが嬉しくて、暇を見つけては浸かっていた。晴夏には「そんなに浸かっていたら、皮膚がぶよぶよになるわよ」と呆れられたけれど。
高級旅館の食事は豪勢の一言。何が出てきても大喜びで食べる灯里に、「食べさせ甲斐のある子やな」と厳太郎も喜んだ。
灯里と晴夏は同室に泊まり、飽きることなく話をした。
晴夏と会うのは半年ぶりだったので、お互い話すことはいくらでもある。四国の直前にいたのが、非常に交通の便が悪い東北の地で、さすがの晴夏も突撃してこれなかったのだ。
「兄貴の陰謀を感じる」と、晴夏はカンカンに怒り、それでなくても仲が悪い安西兄妹を灯里は本気で心配した。でも、兄弟のいない灯里にとっては、ケンカができる兄がいることも羨ましい。
「来年の四月から、灯里ちゃんはどうするの?」
遠慮がちに晴夏が訊ねる。今まで離婚について触れてこなかった晴夏だが、いよいよ三ヶ月後にその時が来るとなると、聞かずにはいられなかったようだ。
それについては灯里も思案中で、もとのように東京に住むか、故郷の村に帰るか、それとも点々と移り住んできた土地のどこかに行くかで迷っている。
「まだ、考え中なんです。また戻っておいでと言ってくれる人もいるので、東京以外のどこかに落ち着くのもアリかなと思って」
「バカ兄貴から高額な慰謝料ぶんどってやりな。生涯優雅に暮らせるぐらいの」
黒い微笑みを浮かべる晴夏が怖い。なまじ美しいだけに怖さも二倍増しだ。